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秋田家史料データベース東北大学附属図書館

「秋田家史料目録」公刊によせて

東北大学附属図書館長
小 田  忠 雄 

 本冊子は、東北大学附属図書館所蔵「秋田家史料」全体の目録である。
 「秋田家史料」とは、旧三春藩主秋田家に伝来した古文書・蔵品などの総称で、中世末期から近代までに及ぶが、その中心は江戸時代の史料である。内容の概略は解題を参照願うにしても、全体として大名家の旧蔵にふさわしい種々の公的史料と、秋田家歴代の文化状況を反映する各種の典籍や伝本を含む、多様な姿を見ることができる。
 本目録の作成は、昭和10年代以降断続的に試みられてきたが、本格的に附属図書館調査研究室で取り組まれたのは平成7年以降である。同研究室は、本学所蔵資料の調査・研究等に従事する教官組織として昭和41年1月に設置され、以来附属図書館の学術活動に大きく貢献してきた。事務官のみで構成される大半の大学附属図書館とは異なる、本学独自の組織であったが、平成13年4月より情報シナジーセンター学術情報研究部に改組された。古文書の整理と目録化事業が継続された結果、本目録の刊行に至った。
 秋田家史料書のうち、慶長年間までに成立した古文書と名家筆跡等の蔵品などは、暫定的な目録が作成され早い時期から出納可能な状況にあった。そのため学内外からの注目度も高く、各地の博物館等の展示に借り出されることが少なくなかった。また、附属図書館での>企画展示に出陳され、本学所蔵史料の白眉として展示の目玉となってきた。そうした機会に学内外の研究者から、残された部分の整理を求める声が高まったのも自然の成り行きであった。本目録の刊行は、それらの要望に応えるものであるが、さらに利用の機会を提供することを目指し、ホームページでの公開を予定している。電子情報の提供は史料利用の可能性を広げるが、冊子体の目録には、より原型に近い字体を使用できるなど優れた側面がある。冊子体と電子情報と、両者の長所を生かす形で利用して頂ければ幸いである。
 なお本目録の作成は、情報シナジーセンター学術情報研究部の曽根原 理助手が担当した。基礎となる調査の一部は、大学院文学研究科の大藤修教授(日本近世史)の指導の下に日本史研究室の大学院生・学部学生に協力して頂いた(平成11年度および12年度)。大藤教授には、さらに本目録全体にわたって御助言頂いた。また、予算的にも時間的にも厳しい状況下、東北大学附属図書館事務部の方々には、本目録の刊行および電子情報としての公開に至る作業を進めて頂いた。ここに関係各位に感謝申し上げると共に、本目録を基礎としてこの貴重な史料が広く活用され、多くの研究業績が稔るよう願うものである。
 文学部日本史研究室で近世史研究を指導された渡邉信夫先生は、本史料が当初文学部で受け入れられ、附属図書館に移管された後も長く文学部で管理されてきた経緯から、目録作成に対して大きな期待を持っておられた。平成13年1月15日に急逝され、本目録を生前に御覧頂けなかったのは大変残念である。
(2001年8月15日)

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